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2019.09.03税務情報

民法改正(相続編)の概要と施行時期

  • Actus Newsletter
  • 民法

 2018年7月6日に相続に関する民法等の規定(いわゆる相続法)を改正する法律が成立し、一部の規定が2019年7月1日から施行されております。高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、1980年以来約40年ぶりの改正となります。今回は、改正内容と施行時期等の取り扱いについてご紹介いたします。


■遺産分割に関する見直し
○持ち戻し免除の意思表示の推定規定(2019年7月1日以後にされた遺贈・贈与から適用)
 一定の夫婦間で居住用不動産の遺贈または贈与が行われた場合に、相続発生後の遺産分割において遺産の先渡し(特別受益※)を受けたものとして取り扱わないことにより、遺贈や贈与の趣旨を尊重した遺産分割が可能になりました。
  ※特別受益とは、特定の相続人が被相続人から遺贈または贈与による一定の利益を受けていた場合のその利益のことです。特別受益は、遺産分割時には、遺産の先渡しがあったものとして取り扱われます。
 (改正前) 夫婦間において「居住用不動産」の遺贈または贈与が行われたとしても、相続発生時には遺産の先渡し(特別受益)として遺産に含めて計算を行うこととされており、結果、最終的な取得分はその贈与がなかった場合と同じになる取り扱いとなっておりました。
 (改正後) 婚姻期間が20年以上である夫婦間において、「居住用不動産」を遺贈または贈与した場合には、原則は特別受益として遺産に含めなくて良いこととなりました。結果、配偶者が「居住用不動産」を確保しつつ遺産分割を行うことができることとなります。
  ⇒税務上は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた「居住用不動産」または「居住用不動産取得のための金銭の贈与」について最高2,000万円まで控除できる贈与の特例があります。「居住用不動産」についてこの贈与の特例を利用すると、上記(改正後)の対象となりますが、「居住用不動産の取得のための金銭の贈与」について、贈与の特例を利用した場合には(改正後)の対象外となりますので注意が必要です。

○預貯金の払戻し制度の創設(2019年7月1日以後にする仮払いから適用)
(改正前)遺産分割が完了するか、家庭裁判所の許可を得ないと、葬儀費用や相続債務の支払い等として使う場合でも預貯金の払い戻しはできませんでした。
(改正後)預貯金債権について他の共同相続人の同意や家庭裁判所の判断を経ずに、同一金融機関ごとに150万円を上限として、金融機関の窓口において支払いを受けられるようになりました。また、仮払いの必要性があり、他の共同相続人の利益を害さない限り、申立てにより家庭裁判所の判断で仮払いが認められる要件が緩和されました。

■配偶者保護に関する見直し
○配偶者居住権の創設(2020年4月1日以後開始した相続から適用)
 (改正前)住宅が第三者に相続された場合など、配偶者の居住が保護されていませんでした。
 (改正後)「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」という配偶者のための2種類の権利が創設されました。
配偶者短期居住権・・・相続開始時に被相続人の自宅に無償で住んでいた配偶者が一定期間(最低6か月間)無償でその家を使用することができるとする権利(相続開始により自然に発生
配偶者居住権・・・配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の自宅を原則として終身の間、無償で使用することができる権利(遺産分割、遺贈によって取得させる必要あり
 ⇒ ①②ともに譲渡不可、配偶者の死亡等一定の消滅事由あり
 ⇒ ①の存続期間は、建物の帰属が確定した日か相続開始時から6か月経過日のいずれか遅い日
 ⇒ 被相続人と配偶者以外の者が共有している建物の場合、配偶者居住権は成立しないので注意が必要

■遺言制度に関する見直し
○自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日以後作成の自筆証書遺言から適用)
 (改正前)遺言全文について自書が要求されており、別途目録も全て自書しなければなりませんでした。
 (改正後)添付する財産目録について、自書ではなくパソコンでの作成や、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することが可能になりました。財産目録の各頁には署名押印が必要となります。

○自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日以後作成の自筆証書遺言から適用)
 (改正前)遺言全文について自書が要求されており、別途目録も全て自書しなければなりませんでした。
 (改正後)添付する財産目録について、自書ではなくパソコンでの作成や、通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを添付することが可能になりました。財産目録の各頁には署名押印が必要となります。

○自筆証書遺言の保管制度の創設(2020年7月10日から適用)
 (改正前) 自筆証書遺言は、自宅や貸金庫などに保管するしかなく、紛失や相続人が遺言に気づかないなど遺言が活かされない可能性がありました。
 (改正後) 法務省令で定める様式で作成した、封をしていない遺言書を持参することにより、自筆証書遺言を法務局に保管できるようになりました。なお保管の申請は、遺言者本人が行わなければなりません。

■配偶者保護に関する見直し(2019年7月1日以後開始した相続から適用)
 (改正前) 遺留分減殺請求を行うと、対象が物である場合には割合に応じた共有になるとされており、例えば土地や建物などではとても複雑な共有関係が生じる可能性がありました。また、相続人に対する生前 贈与は全ての期間の贈与が対象となる取り扱いとされていました。
 (改正後) 遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることとされ、共有状態を解消することができるようになりました。また、相続人に対する生前贈与は相続開始前10年間にされた贈与に限り対象となる取り扱いとされました。

■相続の効力等に関する見直し
○法定相続分を超える部分の承継にかかる第三者対抗要件(2019年7月1日以後開始した相続から適用)
 (改正前) 相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされていました。
 (改正後) 法定相続分を超える部分の承継については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととなりました。

■相続人以外の者の貢献
○相続人以外の者にかかる特別寄与料制度の創設(2019年7月1日以後開始した相続から適用)
 (改正前) 相続人以外が介護などで尽くしても、相続財産を受け取ることはできませんでした。
 (改正後) 相続人以外の被相続人の親族(長男の妻など)が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。なお、この取得した金銭については、相続税の課税対象となります。







※本記事は、アクタス税理士法人より掲載許可をいただき、同ホームページにて公開されている記事を転載したものです。
https://www.actus.co.jp/library/knowledge/list.shtml


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