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COLUMN

2022.03.03税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】改正相続法遺留分との絡み

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 改正相続法遺留分との絡み

改正相続法と遺留分との関係性についてご教示ください。


Answer

下記の考え方が通説です。

【解説】
改正相続法により、遺留分の算定方法の見直しが行われました。相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限って、遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入することになります。
今回の見直しにより、例えば、10年よりも前に贈与した自社株式については遺留分侵害額請求の対象外となります。したがって、早期に自社株式を生前贈与することにより、中小企業経営承継円滑化法の民法特例を適用しなくても遺留分のことを気にせず事業承継を行うことが可能になるかもしれません。これは今後、事業承継税制(特例)の活発化による遺留分減殺請求問題が表面化してくる中で、事業承継スキームにも大きく影響する改正といえそうです。
しかし、実務上の大きな留意点として、民法第1044条第1 項後段の規律(害意がある場合の規律)があります。

改正民法第1044条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

2 第904条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。

3 相続人に対する贈与についての第1項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。



遺留分の全体金額を圧縮するため株式異動前に株価低減策をとると、この条文が適用される恐れがあります。こういった案件が事業承継税制(特例)の大幅な普及とともに表面化してくると思われます。
最判平成10年3月24日(事件番号 平成9 オ2117)判決において、特別受益者への贈与と遺留分減殺の対象について下記の判断を示しています。

民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、民法1030条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の対象となるものと解するのが相当である。
けだし、民法903条1項の定める相続人に対する贈与は、すべて民法1044条、903条の規定により遺留分算定の基礎となる財産に含まれるところ、右贈与のうち民法1030条の定める要件を満たさないものが遺留分減殺の対象とならないとすると、遺留分を侵害された相続人が存在するにもかかわらず、減殺の対象となるべき遺贈、贈与がないために右の者が遺留分相当額を確保できないことが起こり得るが、このことは遺留分制度の趣旨を没却するものというべきであるからである。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。