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COLUMN

2022.08.04税務コンサルのポイント

【事業承継スキーム】消費税、準ずる割合の実務上の留意点―①

  • 富裕層コンサルのイロハ
  • 事業承継スキーム

執筆者:伊藤俊一 先生
※伊藤先生のプロフィール詳細は、本ページの最後にてご確認いただけます。


Q. 消費税、準ずる割合の実務上の留意点

本体会社から持株会社に土地を譲渡した場合、消費税の取扱いで留意すべき事項をご教示ください。


Answer

準ずる割合です。下記が実務上の留意点となります。

【解説】
下記の質疑応答事例を細部まで確認しましょう。

たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認

【照会要旨】
土地の譲渡は非課税とされており、その譲渡対価は消費税法第30条第6項《課税売上割合》に規定する課税売上割合(以下、単に「課税売上割合」という。)の計算上資産の譲渡等の対価に含まれますが、土地の譲渡に伴う課税仕入れの額はその譲渡金額に比し一般的に少額であることから、課税売上割合を適用して仕入れに係る消費税額を計算した場合には、事業の実態を反映しないことがあります。
そこで、たまたま土地の譲渡対価の額があったことにより課税売上割合が減少する場合で、課税売上割合を適用して仕入れに係る消費税額を計算すると当該事業者の事業の実態を反映しないと認められるときは、課税売上割合に準ずる割合の承認を受けることができる取扱いはできないのでしょうか。

【回答要旨】
土地の譲渡が単発のものであり、かつ、当該土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合に限り、次の①又は②の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合の承認を与えることとして差し支えないこととします。

  1. 当該土地の譲渡があった課税期間の前3 年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(消費税法施行令第53条第3項《通算課税売上割合の計算方法》に規定する計算方法により計算した割合をいう。)
  2. 当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

(注)

1 土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合とします。

2 課税売上割合に準ずる割合は、承認を受けた日の属する課税期間から適用となります。承認審査には一定の期間が必要となりますので、「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」は、余裕をもって提出してください。

3 この課税売上割合に準ずる割合の承認は、たまたま土地の譲渡があった場合に行うものですから、当該課税期間において適用したときは、翌課税期間において「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出してください。なお、提出がない場合には、承認を受けた日の属する課税期間の翌課税期間以降の承認を取り消すものとします。


【関係法令通達】
消費税法第30条第3項、消費税法施行令第47条、消費税法基本通達11-5-7


上記の質疑応答事例をしっかり理解するためには下記の各項目の理解が必要です。
「準ずる割合」に関する事項です。

○課税仕入に係る消費税計算方法判定
【消費税基本通達11-5-9】
(課税売上割合が95%未満であるかどうかの判定)

11-5-9 法第30条第2項本文《仕入控除税額の計算》に規定する「課税売上割合が100分の95に満たないとき」に該当するかどうかは、事業者が課税売上割合に準ずる割合につき税務署長の承認を受けているかどうかにかかわらず、課税売上割合によって判定することに留意する。


とあることから、現在の課税売上割合によって判定します。

○そもそも個別対応方式の共通仕入控除税額の計算にしか使用できません。

○上記はあくまで「承認申請」となっているので、課税実務では、最低1か月以上余裕をみて提出します。

○合理的な計算方法とは下記です。


【消費税基本通達11-5-7】
(課税売上割合に準ずる割合)

11-5-7 法第30条第3 項《課税売上割合に準ずる割合》に規定する課税売上割合に準ずる割合(以下11-5-9 までにおいて「課税売上割合に準ずる割合」という。)とは、使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合その他課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出した割合をいう。


【消費税基本通達11-5-8】
(課税売上割合に準ずる割合の適用範囲)

11-5-8 課税売上割合に準ずる割合の適用に当たっては、その事業者が行う事業の全部について同一の割合を適用する必要はなく、例えば、次の方法によることもできるのであるから留意する。
ただし、この場合には、適用すべき課税売上割合に準ずる割合の全てについて税務署長の承認を受けなければならないのであるから留意する。
(平23課消1-35により改正)


(1) 当該事業者の営む事業の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法

(2) 当該事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法

(3) 当該事業者の事業に係る事業場の単位ごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法



質疑応答事例に関する課税実務上の留意点です。

○あくまで肌感覚ですが、過去3年以内前後に同一の法人で他の土地の譲渡があった場合には、所轄税務署に個別照会をかけるべきです。ここで3年としたのは、準ずる割合は3年を基準に計算するからです(上記質疑応答事例参照のこと)。

○事業者の営業の実態に変化がないことが要件となりますが、当該売却した土地で行っていた事業を売却により廃業した場合、判断が困難です(仮にこの場合でも売上の多くを占める本業自体に変化がなければ、上記要件に抵触しないと考えられるため)。この場合も所轄税務署に個別照会をかけるべきです。

○上記の計算構造上、結果として適用を受ける課税期間の中途で課税売上割合を計算せざるを得ないことになってしまいます。課税実務では、直近課税期間については土地売却後における最新の月次試算表に基づき課税売上割合を計算することになります。

○上記の計算ロジックでは共通対応課税仕入の金額がそれほど大きくない場合はあまり税効果がないケースも想定されますので、実際の適用には有利・不利シミュレーションをすべきです。



・・・つづきは次回、事例および関連論点についてお送りいたします。


※コラムに関するご質問は受付しておりません。予めご了承ください。



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伊藤 俊一

税理士
伊藤俊一税理士事務所 代表税理士。
1978年(昭和53年)愛知県生まれ。税理士試験5科目合格。
一橋大学大学院修士。都内コンサルティング会社にて某メガバンク案件に係る事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングは勤務時代から通算すると数百件のスキーム立案実行を経験。現在、厚生労働省ファイナンシャル・プランニング技能検定試験委員。
現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士課程(専攻:租税法)在学中。信託法学会所属。