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COLUMN

2018.09.05産業情報

産業のデジタル化がもたらす “日本型ITサービス”市場の構造変化

  • Mizuho Industry Focus
  • 経済情報

Mizuho Industry Focus Vol.211
産業のデジタル化がもたらす “日本型ITサービス”市場の構造変化

2018年8月30日 発行

〈要 旨〉

○IoT・AI等の進展に端を発した“第4次産業革命”が世界的な潮流となる中、日本においても従来の延長線上ではない抜本的なビジネスプロセス改革や新たなビジネスモデルの創出を目的とする“産業のデジタル化”のための戦略的なIT投資が本格化する見通しである。

○ユーザー企業におけるIT投資スタンスの変化は、基幹システムなどの大規模システムに代表される、これまで日本のITサービス市場の根幹を成してきたSoR(SystemofRecord)市場の縮小をもたらす一方、クラウド、IoT・AI、データアナリティクス等のテクノロジーを活用するSoE(SystemofEngagement)市場の拡大に繋がるものである。

○このような変化に伴い、日系SIer(システムインテグレーター)は、既存ビジネスモデルの見直しを迫られる。日系SIerは、ユーザー企業の個別要求に応じたシステム開発を受託し、多段階下請構造の中の協力企業も活用しながら、工数の多い開発案件をこなしてきた。世界的にも例が少ないとされる労働集約的な“日本型ITサービス”は、安全性・堅牢性が求められるSoR開発には適したモデルであったが、近年はクラウドや各種開発ツールなど、SoRの開発効率化を実現する環境が整いつつある。加えて、ユーザー企業では、自社の業務フローに合わせてシステムをカスタマイズする従来的な慣行を止める“変心”も想定される。

○他方、“産業のデジタル化”を実現するためのSoE開発は、外部環境変化への素早い対応を実現する迅速性・柔軟性が求められ、ユーザー企業はコストやスピードを優先した合理的なシステムを選択することから、“日本型ITサービス”が通用しにくくなっている。ゴール探索型とも言えるSoEの開発にあたり、SIerは顧客が抱える課題に対して、最新テクノロジーを活用した解決策を低コストで素早く提案する価値提案型のモデルに変革する必要がある。

○“産業のデジタル化”は、ユーザー企業自身が新規参入者やグローバル大手との競争に勝つために、大胆に自社のビジネスモデルを変えようとする取り組みである。しかし伝統的な日本企業は、その実現に必要なIT開発の力量を持たず、外部企業のノウハウに頼らざるを得ない。顧客の変革をリードするようなSIer自身の変革によって、日本の産業競争力向上に向けた重要な役割を日系SIerが担うことを期待したい。



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みずほ銀行 産業調査部

※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html