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COLUMN

2024.01.16M&A全般

2023年の国内M&A市場の動向

  • M&A

執筆者:株式会社日税経営情報センター シニアマネージャー



2023年に日本企業が関与したM&Aの年間件数をレコフデータで確認しますと4015件となりました。過去最多となった2022年の4304件に比べて289件(6.7%)の減少となりました。前年比で減少となるのは2020年以来3年ぶりとなります。この2023年の4015件のうち、国内企業同士のM&A件数は、3071件となり、前年比274件(8.2%)の減少となりました。

1.2023年の国内M&A市場の動向
この国内企業同士のM&Aについて、形態別の内訳をみますと、買収は1200件となり、過去最多件数だった2022年から28件(2.3%)と僅かに減少し、事業譲渡は310件で前年比16件(4.9%)の減少となっていますが、最も減少が大きかった形態としては資本参加が1440件と前年比180件(11.1%)の減少となっています。資本参加は2017年に前年比271件と大きく増加して1,000件超の大台に乗せて以来、順調に件数を伸ばして形態別での最多件数を維持してきましたが、過去最多の2021年1622件から若干減少しており伸び悩んだ状況となっています。

2.業種別の状況
業界別(電力ガス、金融を除く25業界)の件数では、電機の179件(前年比2件増)が25業界中で件数1位となっており、過去からもこの順位には変化がありません。他に、建設143件(前年比22件減)、不動産126件(前年比4件減)、介護122件(前年比9件減)、食品112件(前年比9件増)、は前年と同じ顔ぶれであり、過去から順位の入れ替わりも殆どありません。2023年に件数が大きく動いた業界としては、広告が前年比19件減少で65件、学習塾が16件減少で35件、精密が15件減少で45件となっています。コロナ禍によって大きな影響を受けた業界については、旅行観光が前年比3件増加で9件、ホテル旅館が1件増加で26件となり、共にコロナ前の水準に戻っていますが、外食は8件減少して45件となりました。外食は2018年に78件、2019年に76件の水準にありましたが、コロナ禍以降は毎年件数を減少させています。

3.総括
データの中で金額が開示されている1,160件について、規模別の件数をみますと、1億円以上10億円未満が587件と最多であり、次に1億円未満が235件、10億円以上30億円未満が180件と続き、これら上位が全体に占める比率は86%となり、過去からもこのウェイトには大きな変化がありません。さらに30億円以上100億円未満が87件、100億円以上500億円未満が55件となっており、これらの規模帯も同様に過去から大きな変化はありません。ちなみに、この2023年に最大金額となったものは、日本産業パートナーズを中心とするコンソーシアムによる東芝へのTOBで金額は約2兆円となっています。金額の大きな案件はTOB、MBOによるものですが、他にも大きなものとして、産業革新投資機構(JIC)によるJSRのTOBが約9,039億円、大正製薬ホールディングスの上原氏など経営陣による同社のMBOが約7,086億円、JICによる新光電気工業へのTOBが約6,848億円、エムスリーによるベネフィットワンへのTOBが約1,399億円といった具合です。
以上のように、2023年の国内企業同士のM&Aは全体として件数を若干減少させましたが、過去の水準と比べてもまだ高水準にあります。国内企業M&Aでは、規模の相対的に小さな企業の案件、すなわち中小企業M&Aの占める割合が大きく、こうした企業では経営者の高齢化や後継難といった事業承継の問題を抱えるところが多く、この状況は当面続くものと考えられます。また近年では国も税制など各種支援策に注力しています。今後も引続きM&Aを後押しする環境が続くことが想定され、中小企業M&Aは高水準で推移する事が予想されます。



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