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COLUMN

2025.07.29信託

家族信託が資産隠しの手段に?―暴力団事件に見る信託制度の盲点―

  • 信託

■事件の概要:親族への信託と仮処分命令
報道によると、北九州市に本部を置く暴力団・工藤会のトップ、野村悟被告(78歳/上告中)が、2020年ごろに所有していた土地(小倉北区内、少なくとも20筆・7,000㎡超)を、親族2人に信託していたそうです。

一見すると普通の信託契約ですが、問題はタイミングです。野村被告は、市民襲撃事件などに関して遺族らから損害賠償請求を受けており、すでに確定した賠償額は1億円超。差押えや強制競売によって、所有不動産が賠償の原資になる可能性もあった中での信託契約だったのです。

結果、信託された土地は債権者から見えない場所に“逃げてしまった”形となり、資産回収が困難になりました。そこで被害者側は、土地の一部(約10筆・1,200㎡)について「処分禁止の仮処分」を申し立て、福岡地裁小倉支部が2025年5月22日付でその命令を出しています。

■信託制度の“盾”が“不正の隠れ蓑”になるとしたら…
ご存じのとおり、信託をすることにより信託財産は委託者の固有の財産とは切り離され、受託者名義下での管理・処分に移行します。これが将来の認知症リスクへの対応として役に立つと言われる所以です。

今回のように、すでに損害賠償の動きがある中で信託が行われると、「これは意図的な資産隠しでは?」と見なされてしまうリスクがあります。信託法第11条においても「詐害信託の取消し」という規程があり、委託者が債権者を害することを知って信託を設定した場合は、受託者がそのことを知っていたか否かに関わらず、債権者は受託者を相手取って詐害行為取消請求ができるとされています。

実際、信託契約前に「名義を親族に変えたい」と相談していたという報道もあり、意図の合法性に疑問が残るところです。

■家族信託と商事信託、制度としての違いは?
家族信託は自由度が高く、個々の家庭事情に応じた柔軟な設計ができるのが大きな利点です。ただしその反面、金融当局による監督や報告義務がなく、信託の目的や実態が“見えづらい”構造的リスクもあります。

そこで、制度的な信頼性を担保できるもう一つの選択肢が「商事信託」です。
以下の表は、両者の運用体制の違いを整理したものです:


商事信託において受託者となる信託銀行、信託会社、地銀等は、金融庁の免許または登録等を受けた株式会社等に限られており、信託業法等に基づく当局による厳格な監督体制のもとで運営されています。報告義務、当局による検査なども法令により定められており、今回のような不透明な資産移転が行われにくい制度設計となっている点も、商事信託における信頼性を支える重要な要素です。

■制度の信頼を守るために
信託は「信じて託す」制度です。だからこそ、制度が適正に運用されるためには、それを利用する委託者、受託者等の関係者の誠実な関与が不可欠です。

今回の事件を契機に、信託制度の見直しや監督強化が議論される可能性もありますが、現場でできることも多くあります。私たち自身が、制度の“光”の側に立ち続ける努力を怠ってはならないと感じています。

私ども日税グループでは、株式会社日税経営情報センターで家族信託のコンサルティングを、株式会社日税信託にて商事信託を取り扱っており、今般、遺言信託についても取扱いを開始いたしました。税理士先生や関与先様の幅広いニーズにお応えすべく、相続・資産承継のご相談に専門の職員が丁寧、親切にご対応致します。ご相談は無料ですのでお気軽にお問い合わせください。



私ども日税グループでは信託を活用した資産・事業承継のご相談に専門の職員が丁寧、親切にご対応致します。ご相談は無料ですので、お気軽にお問合わせ下さい。
お問合わせをいただいた税理士先生には信託の小冊子を謹呈致します)



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