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2018.12.18産業情報

重要性を増す異種材接合 ~自動車のマルチマテリアル化に向けて~

  • Mizuho Short Industry Focus
  • 経済情報

Mizuho Short Industry Focus 166号
重要性を増す異種材接合 ~自動車のマルチマテリアル化に向けて~

2018年12月11日 発行

【要約】

◆環境規制の強化に伴い、CO2排出量削減に向けた自動車の車両軽量化ニーズが高まっている。斯かる状況下、車両に鉄鋼以外の素材を採用するマルチマテリアル化が進み、鉄鋼とその他の素材を接合する、異種材接合の重要性が増す見込みである。

◆自動車の生産ラインで最も多く利用されている接合法の抵抗スポット溶接(【図表 5】)は、技術的な課題が山積しており、異種材接合に利用し難い。そのため現時点で、異種材を接合する際の一般的なアプローチは、リベットやねじなどを利用した機械的接合であるが、コストや重量などに鑑み、標準化には至っていない。

◆日系完成車メーカーでは、本田技研工業、マツダが摩擦攪拌(かくはん)接合(【図表 7】)の開発を進めており、素材メーカーでは、神戸製鋼所が超ハイテン鋼板とアルミニウム(※1)の溶接技術を開発し、ファナックとの協業により自動化を目指している。また、三井化学が、金属と樹脂の接合技術を開発するなど、素材メーカーが、素材供給のみならず、異種材接合に取り組むことでマルチマテリアル化を推進する動きが見られる。

◆ドイツに目を転じると、鉄鋼とアルミニウム、樹脂を適材適所に使い分けた車両が多く存在する。ドイツでは、完成車メーカーがマルチマテリアル化に対して積極的なスタンスであることに加えて、構造用接着剤(※2)やレーザ溶接(※3)など異種材接合を実現する有力なプレーヤーが、この流れを後押ししている。

◆日本には、鉄鋼、アルミニウム、炭素繊維の有力な素材メーカーが存在するだけなく、異種材接合の技術や、生産工程の自動化に不可欠なロボット、工作機械の産業が集積しており、マルチマテリアル化の素地はドイツに引けをとらない。素材メーカーが、軽量化に最適な素材とその接合法を導き出し、自動車の将来像を描くことを期待する。


※1 一般的にアルミニウムは、合金として利用されるが、本稿では便宜的にアルミニウム合金をアルミニウムと称す。
※2 長時間大きな荷重に耐える信頼できる接着剤(JIS K6800)。
※3 レーザ光線のエネルギーを利用して、素材を溶融・凝固させることで接合する方法。

みずほ銀行 産業調査部

※本記事は、みずほ銀行より掲載許可をいただき、同行ホームページで公開されている記事を転載したものです。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/index.html