MENU MENU

COLUMN

2020.08.18M&A全般

≪M&A道1丁目≫投資ファンドの新しい動きと中小企業M&Aの行方―②

  • M&A


本コラムは、M&Aキャリア25年超の当社のシニアマネージャーが執筆しております。この情報が関与先様へのアドバイスの一助となれば幸いです。



前回のつづきをお送りいたします。

↓前回分はこちら↓
 ■≪M&A道1丁目≫投資ファンドの新しい動きと中小企業M&Aの行方―①


3. 中小企業のM&Aを取りまく状況

中堅中小企業のM&Aのニーズは、売り買いともにその件数は従前より増えてきているように思われます。
なかでも、事業承継型M&Aの取り扱い件数が多いため、とりわけ中小企業M&Aのプロの人材育成が急務だと思われますが、プロの育成には学術的な研究において10年かかるという主張もあります。こうした中小企業M&Aの仲介者やアドバイザーの育成は急務となりますが、アドバイザーの育成は容易ではありません。今後は人口知能(AI)導入によるマッチング力向上が急務かもしれません。

また、独立行政法人中小企業基盤整備機構では、全国47都道府県に設置された「事業引継ぎ支援センター」を設置し、後継者問題に悩む経営者の相談窓口となっています。ここに持ち込まれる相談件数や事業引継ぎ件数が近年急増していることから、中小企業M&Aの傾向が伺えます(図表1ご参照)。
事業引継ぎセンターが取り扱っている事業承継形態は、その7割弱が第三者承継であり、また、従業員数では7割弱が10名以下となっています。業種別内訳をみると、サービス・その他が28%と一番多く、製造業24%、卸小売20%、建設工事14%、飲食店・宿泊業11%、運輸業3%となっています(注1)。

図1 事業引継ぎセンターの相談社数と事業引継ぎ件数


(出典)独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業引継ぎポータル」ホームページ
https://shoukei.smrj.go.jp/support/ 2020年4月29日閲覧)

後継者不在に対応する中堅中小企業向け事業承継ファンドも随分前から立ち上がっています。
一方、最近では自主廃業ファンド、サーチファンド(注2)などが立ち上がり、中堅中小企業のM&Aで事業再生や活性化など成長支援を目的とした投資ファンドの動きが次第に活発化しつつあるのではないでしょうか。


4. 投資ファンドの新しい動き

(1) 投資ファンドが関与した国内M&Aの推移
投資ファンドが国内企業を買収するケースは増えています。
レコフデータの調査によれば、2019年の投資ファンドによるM&Aの件数は877件と過去最多となりました。M&A全件数の21.5%を占め、金額も対前年比47.2%増加しています(注3)。

また、PwCの調査レポート(注4)においても、日本国内における「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」(注5)の投資動向について、「2019年は投資金額では、前年より大きく伸ばした。また、件数ベースにおいては、安定的な推移がみられた。」と分析しています。2017年のテクノロジー・メディア&テレコム部門での巨大案件などがあったことを除けば、ここ2~3年間毎年70~80件の投資案件が成立しています。

PEファンドの投資資金募集状況を示す「ファンドレイジング(Fundraising)」(注6)動向に関して、PwCの同調査では、「世界的な低金利の金融情勢の中、より高いリターンを求める投資家からPEファンドに資金が流入している状況が伺える。」と分析しております。
このことは、投資資金が日本市場に潤沢に集まっていることを示しています。すなわち、PEファンドによる「カーブアウト(Carve out)」(注7)、「MBO(Management Buyout)」(注8)による非公開化(注9)、資本増強および事業承継案件などへの投資余地が十分にあるということを示しています。
そうした投資環境下、ここ数年の間に中小企業向けPEファンドが設立される事例も注目されはじめています。次回「5.最近立ち上がった中小企業経営支援ファンド」において、いくつか事例をご紹介します。

図2 PEファンドが関与した国内投資金額と件数の推移

(出典)PwC Japanグループ作成「日本におけるプライベート・エクイティ・マーケットの分析と日本企業への提言 2020」
http://www.pwc.com/jp2020年4月24日閲覧)


(2) 中堅・中小企業向け投資ファンド
まず、中堅・中小企業向け事業承継ファンドについて紹介します。
一般に投資家を募集する投資ファンドには、先に紹介しましたPEファンドのほかに、MBOファンド、買収ファンド、企業再生ファンド、ベンチャーキャピタル、ターンアラウンド・ファンド (Turnaround Fund) などと呼ばれるものがあります。投資スキームは、主に「レバレジッド・バイアウト(Leveraged Buyout;LBO)」(注10) により資金調達します。

中堅中小企業向け事業承継ファンドには、どのような投資ファンドがあるのでしょうか。ある投資ファンドでは、投資対象としての売上規模を数億~50億円、企業価値(Enterprise Value)でみて数億~30億円程度をひとつの目安としているものがあります。企業のライフサイクルでみると成熟期や停滞期、対象業種は限定していないが、業界内や他社と差別化できているニッチ企業です。

ファンド自体の運用方法は、投資対象企業に対して投資して3~5年で企業価値を向上させたのち、第三者(新たな買手候補先企業)に売却することにより投資資金を回収し、出資者に還元するという一連の流れが投資ファンドのビジネススキームです。



 ・・・つづきは次回、『≪M&A道1丁目≫投資ファンドの新しい動きと中小企業M&Aの行方―③』でお送りいたします。





(注釈)

(注1) (出典)独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業引継ぎポータル」ホームページ(https://shoukei.smrj.go.jp/support/ 2020年4月29日閲覧)

(注2)「サーチファンド(Search Fund)」とは、1984年にアメリカで誕生した投資モデルといわれています。30代前後のトップMBAを卒業した若者1~2名(「サーチャー(Searcher)」といいます。)が、個人投資家(10~15人程度)から投資資金を集め、自らが社長となって経営するための中小企業を探索し、買収するための「サーチファンド (Search Fund)」を設立します。このため、一般的に「サーチファンド」とは、「プライベート・エクイティ・ファンド」等よりも小規模なものとなっています。また、「プライベート・エクイティ・ファンド」が継続的に複数投資するのに対し、「サーチファンド」では、自らが社長となるため、投資先は1社のみとなります。投資後は、サーチファンドに一定期間所属していた若者は、投資先会社の経営者となるため、買収先探索や買収業務は停止するというようなものとなっています。
(出典)株式会社Japan Search Fund Acceleratorのホームページhttp://japan-sfa.com/model/

(注3)出典はレコフデータ「NEWS RELEASE『2019年1-12月の日本企業のM&A動向』」(2020年1月6日)

(注4)(出典)PwC Japanグループ作成「日本におけるプライベート・エクイティ・マーケットの分析と日本企業への提言 2020」(http://www.pwc.com/jp2020年4月24日閲覧)

(注5)「プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)」とは、「機関投資家から資金を集めて企業に投資するファイナンシャル・バイヤーであり、一定期間投資したのち、投資を回収して、投資家に還元し、自身もその利益の一部を受け取る。独立系、外資系、大手金融機関系があり、10人から15人程度の専門家で構成される。そのバックグラウンドは、投資銀行、商業銀行、コンサルティング・ファーム、会計士、弁護士、事業会社など、様々である。」をいいます。(出典)「YCG」経営ナレッジ/M&A事業承継用語集/会計・税務・ファイナンス」(https://www.ycg-advisory.jp/knowledge/glossary/puraibe-to-ekuitexi-fando/ 2020年4月28日閲覧)

(注6)「ファンドレイジング」とは、M&Aでは投資家などからの投資資金募集のことをいいます。一般的なファンドレイジングの定義としては、「NPO(Non-Profit Organizations : 民間非営利団体。NPO法人のみならず公益法人、社会福祉法人などを含む)が、活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為を総称していいます。もともとは、「Raising Fund」(資金を集める)という言葉が名詞化した名称です。主に民間非営利組織の資金集めについて使われる用語なのですが、金融業界では、投資家や民間企業に関連する資金集めに使われています。ファンドレイジングといった場合、狭義には寄付金のみを対象としたものを指します。」(出典)(https://www.jfra.jp/ 2020年8月20日閲覧)。M&Aでは投資家などからの投資資金募集のことをいいます。

(注7)「カーブアウト(Carve out)」とは、「上場会社のグループ内の子会社または事業の価値がマーケットから低く評価されている(コングロマリット ディスカウント状態)ときに、当該事業を切り出し、社外の別組織として独立させることにより、当該事業の価値を実現させることをいう。しかし、デューデリジェンスの実務では、「Carve out=切り出す」という用語に準じ、事業を分離して切り出す一連の作業、または、全社の財務諸表から対象事業の財務諸表を切り出す作業を指すことが多い。会社全体を移転対象とする合併や株式譲渡のような場合には、移転対象の実現を表現したものとして会社の決算書があるが、事業部など会社の一部を切り出す事業分離等の場合には、通常、対象範囲に決算書がない。そこで全社決算書のうちから対象事業に係る部分を切り出し、当該事業に係る財務諸表を擬制するカーブアウトの作業が必要となる。このようにして財務諸表の形で財政状態や経営成績を表示することにより、事業の実態が可視化される。」を指す。(出典)「Deloitte デロイトトーマツ」ホームページ(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/articles/term-carve-out-20120719.html 2020年4月28日閲覧)

(注8)「MBO(Management Buyout)」とは、「経営陣自ら会社の株式・事業などをその所有者から買収することである。なお、経営陣ではなく従業員が株式を譲り受けるような場合をEBO(Employee Buyout)、経営陣と従業員が共同で株式を譲り受ける場合をMEBO(Management and Employee Buyout)という。経営陣が所有する資金は限られている場合が多いため、とりわけ小規模な会社が対象となる場合を除いては、外部の投資ファンドや金融機関等からの資金調達によりMBO資金を調達するケースが多い。MBOを行う主な目的は、(1)ノンコア事業を独立させ新たな資本のもとで、経営陣に自由裁量を拡大させた経営を行うこと、(2)オーナー企業において経営陣に事業承継し、後継者問題を解決するとともに経営能力を有する人物による経営を確保すること、(3)上場企業を非公開化することなどが挙げられる。」を指す。(出典)「Deloitte デロイトトーマツ」ホームページ(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/articles/term-mbo-20110526.html 2020年4月28日閲覧)

(注9)「非公開化(Going-private)」とは、「MBO、上場子会社・関連会社の完全子会社化等により、株式公開企業が上場をとりやめ、株式を非公開とすることである。」を指す。(出典)「Deloitte デロイトトーマツ」ホームページ(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/mergers-and-acquisitions/articles/term-delist-20120127.html 2020年4月28日閲覧)

(注10)「レバレッジド・バイアウト」とは、「M&A(企業の合併・買収)の手法の一つで、買収先企業の資産または将来のキャッシュフローを担保に、金融機関等から資金調達をして行う企業買収のことをいいます。これは、自己資金が少なくても、大きな資本の企業を買収できることから「テコの原理(leverage)」が働くことになり、また買収の実施後は、調達した資金が買収された企業の負債となります。一般にレバレッジド・バイアウトは、短中期の転売を目的としたものと、長期の事業活動を目的としたものに分けられます。」をいいます。(出典)「iFinance」ホームページ(https://www.ifinance.ne.jp/glossary/management/man097.html 2020年4月28日閲覧)










あわせて読みたい!
<事例編・第4号>内部統制の重要性―①<事例編・第3号>ベンチャー企業とM&A―①



サービスのご案内
日税M&A総合サービス日税事業承継支援サービスメールマガジンのご登録



免責事項について
当社は、当サイト上の文書およびその内容に関し、細心の注意を払ってはおりますが、いかなる保証をするものではありません。万一当サイト上の文書の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いかねます。
当サイト上の文書および内容は、予告なく変更・削除する場合がございます。また、当サイトの運営を中断または中止する場合がございます。予めご了承ください。
利用者の閲覧環境(OS、ブラウザ等)により、当サイトの表示レイアウト等が影響を受けることがあります。
当サイトは、当サイトの外部のリンク先ウェブサイトの内容及び安全性を保証するものではありません。万が一、リンク先のウェブサイトの訪問によりトラブルが発生した場合でも、当サイトではその責任を負いません。
当サイトのご利用により利用者が損害を受けた場合、当社に帰責事由がない限り当社はいかなる責任も負いません。



株式会社日税経営情報センター